「あ。」

目が合った瞬間、何かに気づいたようにスタンが声を上げた。
そしてそのまま僕の前にかがみこんでくる。
一体なんの真似だと訝んでいた、その時。


ふわり


触れてみなければわからないもの



「………っ!」
「あちゃー、ほっぺた怪我してる。さっきの戦闘かな。」

触れた。スタンが、僕の、頬に。
傷ついた皮膚の周りを指先で撫でながら、普段は若干高い位置にある瞳が、真っ直ぐに僕を見つめている。

思わず息を飲んだ。

吸い込まれるような深い青、それを縁取る金色の睫、整った鼻梁、そして小さく開いた桜色の唇。
能天気な性格が災いし見落としがちだが、こいつは結構(いや、かなり)美人だ。
さらに大変不本意ではあるが、僕はこの男に少なからず好意を抱いていたりする。
そんな相手に至近距離で見つめられて、冷静でいられるはずがない。
どんどん熱くなっていく頬に気づかれたくなくて、

「っ放せ!」
「へ?って、うわっ」

ぱしん。思いきり手を振り払った。

スタンは最初驚いた表情をしていたが、すぐにそれを拗ねたものへと変える。
「なんだよー!心配してんのに。痕残ったら大変だろ!」
そんなことを気にかけていたのか。この位の傷など、すぐに癒えるのに。
「くだらんな、僕の顔がどうなろうとお前には関係ないだろう。」
ようやく熱のひいてきた頬に密かに安堵しつつ、鼻で笑うように言うと、

「関係ある。だって俺、リオンのこと好きだから!傷ついてほしくないって思うの当然だろ?」
さらり、と。眩いばかりの笑顔で言ってのけた。


そうしてまた、上昇する僕の体温。
平常心なんて、甘い砂糖菓子のような言葉ですっかり溶かされてしまった。



2008.08.17.
このあとリオンが暴走してまた一悶着起きるわけですが。攻めが受けに見惚れる瞬間が好きです^^
着色するかしないか迷ったけど挿絵っぽくしたかったので白黒
以前拍手でリオスタ楽しみと言って下さった方へ愛を込めて。

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